○富士川町こどもの権利条例

令和7年6月13日

条例第18号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第4条)

第2章 こどもの権利(第5条―第12条)

第3章 こどもの権利を保障する取組(第13条―第18条)

第4章 こどもの権利侵害に関する相談と対応(第19条)

第5章 こどもにやさしいまちづくりの推進(第20条)

第6章 雑則(第21条)

附則

令和5年4月1日、こども基本法(令和4年法律第77号)が施行され、こどもの権利を尊重し、より良い成長を支援する取組の必要性が深まりました。こども基本法は、「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」の4つの原則「生命、生存及び発達に対する権利」、「子どもの最善の利益」、「子どもの意見の尊重」及び「差別の禁止」と理念を共有しています。

こどもは、一人ひとりが固有の人権と人格を持ったかけがえのない存在です。全てのこどもが、差別を受けることなく、個人として尊重され、権利が保障され、より良く成長していくことが望まれます。こどもは、年齢や発達段階に応じて、意見を述べることができます。おとなには、こどもの権利や意見を大切にし、こどもにとって最善の利益になるよう取り組むことが求められます。

こどもたちの生活環境にも様々な課題があります。情報化社会の急激な進展は、こどもたちの生活や成長に大きな影響を与えています。全てのこどもの権利を保障し、個人としてより豊かに成長できるよう、こどもたちへの必要な支援が求められます。

私たちは、一人ひとりのこどもが自分や他の人たちの権利を尊重し、認め合い、支え合いながら共に生き、平和で差別のない社会を求める主権者に成長していくことを願い「富士川町こどもの権利条例」を制定します。

第1章 総則

(条例が目指すこと)

第1条 この条例は、こどもの権利について、こどもとおとなが理解し、全てのこどもの権利を保障し、一人ひとりのこどもがより豊かに成長することを目指します。そのために、保護者、家族、地域社会、こどもが学び育つ施設、富士川町(以下「町」と表記します。)及び関係機関は、こどもの「最善の利益」を第一に考え、取り組み、こどもの支援を行います。また、こどもとおとながお互いに尊重し合い、パートナーシップを築き、より良いまちづくりを進めることも目指します。

(定義及び言葉の使い方)

第2条 この条例では、「こども」について定めるとともに、使う言葉の表記及び意味は、それぞれ次のとおりとします。

(1) 「こども」、「おとな」と表記し、こどもにもわかりやすい表記に努めます。

(2) 「こども」とは、町に住む18歳未満の人及び町に通所、通学、又は通勤をしている18歳未満の人を言います。

(3) 「保護者」とは、親や親に代わり親権を保有する保護者のことを言います。

(4) 「保護者家族」とは、保護者、祖父母や兄弟姉妹のことを言います。

(5) 「こどもが学び育つ施設」とは、保育園、幼稚園、保育施設、学校及び支援施設のことを言います。

(町民活動との連携)

第3条 町は、こどもの権利保障やこどもの活動を支援する町民活動との連携に努めます。

(こどもの権利保障と町の施策の立案及び推進)

第4条 町は、こどもの権利保障を大切な視点とし、「子ども・子育て支援事業計画」等、こどもに関わる町の施策の立案と推進に努めます。また、こどもの考えや意見を町の施策に生かすよう努めます。

第2章 こどもの権利

(こども一人ひとりが固有する大切な権利)

第5条 町は、この章で規定するこどもの権利を町民へ周知し、こどももおとなも理解が深まるようにするとともに、こどもが安心して生活し、学び、成長していく権利を保障するよう努めます。

(安心して生きる権利)

第6条 こどもは、固有の権利を持つかけがえのないひとりの人間として大切にされ、保護者家族やおとなから愛情を受け、安心して生活し成長することができます。そのためには、主に次の権利が保障されなければなりません。

(1) かけがえのない命が守られ、大切にされること。

(2) 他の人と比較されることなく、愛情と理解を得ながら生活し、育つこと。

(3) 心身の健康についての配慮がなされ、適切な医療の機会が与えられること。

(4) 安心して暮らすことができる環境のもとで育つこと。

(5) あらゆる形の差別を受けないこと。

(6) いじめ、体罰、言葉による迫害、暴力を受けず、放っておかれないこと。

(自分なりの個性や思いを持って生きる権利)

第7条 こどもは、人格や個性が尊重され、ありのままの自分を受け入れ、自分なりに生活していくことができます。そのためには、主に次の権利が保障されなければなりません。

(1) 個性や他の人との違いが認められ、自分なりの人格が尊重されること。

(2) ありのままの自分を大切に、自分なりの思いや夢を持ちながら生活していくこと。

(3) プライバシーが尊重され、他の人から傷つけられることがないよう守られること。

(4) こどもであることをもって不利益や不当な扱いを受けないこと。

(5) 安心できる場所で自分を休ませたり、自分なりの時間を楽しんだりしてゆとりを持って生活すること。

(より豊かに育つ権利)

第8条 こどもは、発達段階や個性に応じて、いろいろなことを学び身につけ、様々な体験を重ねながら、自分を豊かにたくましく成長させていくことができます。そのためには、主に次の権利が保障されなければなりません。

(1) 発達段階や個性に応じて、学び、経験すること。

(2) 仲間や家族と楽しく過ごしたり、一緒にいろいろな活動に参加したりすること。

(3) 芸術、音楽、スポーツ等、豊かな文化に親しむこと。

(4) 自然や歴史に親しむこと。

(5) 必要な情報を手に入れたり、活用したりすること。

(6) ボランティア活動をしたり、地域活動に進んで参加したりすること。

(7) 自分や周りの人の幸せを求めること。

(自分で決めることができる権利)

第9条 こどもは、発達段階や個性に応じて、自分に関することは自分で決めることができます。そのためには、主に次の権利が保障されなければなりません。

(1) 今を生活していくことや将来の生き方について、発達段階や個性に応じて、自分自身で決めていくこと。

(2) 自分に関することを決めていくときには、身近な人や信頼できる人からの適切な支援や助言を受けられること。

(3) 自分に関することを決めるために必要な情報を得ること。

(意見を言うことと参加する権利)

第10条 こどもは、発達段階や個性に応じて、自分に関することや身の回りのことに意見を言うことができます。また、自分の意思でいろいろな機会に参加することができます。そのためには、主に次の権利が保障されなければなりません。

(1) 身の回りのことや関心のあることに対して、意見を言ったり、考えを伝えたりすること。

(2) 保護者家族やおとなから、自分の考えや意見を大切にされること。

(3) 仲間をつくったり、仲間と一緒に活動したりすること。

(4) 自分の考えや行動を深めるために、様々な活動の場に参加すること。

(守り守られる権利)

第11条 こどもは、安心して生活し、育っていくために、自分を守り、守られる権利があります。そのためには、主に次の権利が保障されなければなりません。

(1) こどもの権利は、いかなる人及びいかなる機会からも侵されないこと。

(2) こどもは、必要に応じて適切な相談の機会を与えられること。

(3) こどもは、生活し育っていくために、様々な困難な状況があるときには、支援や保護を受けることができること。

(4) 今の生活や将来に関わることでおとなが決めなければならないときには、自分の考えや意見を言えること。また決めなければならないときには、こどもの考えや意見が尊重されること。

(必要に応じて個別な支援を受ける権利)

第12条 こどもは、置かれた状況に応じて必要な支援を受ける権利があります。そのためには、主に次の権利が保障されなければなりません。

(1) 貧困環境等により安心して生活していくことに妨げがある場合には、町及び関係機関からの支援を受けられること。

(2) 貧困環境等で学ぶ機会が得られない場合には、必要な支援を受けられること。

(3) より良く生活し育っていくために、あらゆる状況や個性に応じて必要な支援を受けられること。

第3章 こどもの権利を保障する取組

(責務と役割)

第13条 こどもの権利を保障していくために、保護者家族、地域、こどもが学び育つ施設、町及び関係機関は、それぞれの責務や役割を自覚し、必要に応じて連携し、こどもの権利を保障する取組を推進します。

(保護者家族におけるこどもの権利保障)

第14条 保護者は、養育するこどもの権利保障について第一義的な責任を持ち、こどもにとって最善な利益を考えて、発達段階や個性に応じて、こどもを守り支援するよう努めます。

2 保護者は、こどもの最善の利益と一致する限りにおいて、その養育するこどもに代わり、その権利を行使するよう努めます。

3 保護者家族は、愛情を持って一緒に生活し、その子なりの良さを大切に、ありのままの自分を受け入れ認める自己肯定感を育むように努めます。

4 保護者家族は、家庭環境がこどもにとって最良の場所となるように努めます。

5 保護者家族は、体罰、言葉による過度の叱責、虐待、放置等、こどもの権利を侵してはなりません。

(地域におけるこどもの権利保障)

第15条 地域は、「地域の子どもは、地域で守り育てる」の理念を念頭に置き、次の取組の継続強化に努めます。

(1) 地域のこどもの存在を知り、愛情を持ってふれあうよう努めます。

(2) 地域の中でこどもの権利が保障され、こどもが安心してすこやかに成長できるよう努めます。

(3) 地域の環境について、こどもが安心安全に生活できるように努めます。

(4) 地域のこどもへの日常的なあいさつや見守り活動に努めます。

(5) こどもが、自然、歴史、文化に豊かにふれあいながら地域の一員として活動する機会を設けるように努めます。

(6) 地域活動を通じて、こどもの意見を尊重しながら、こどもたちの好ましい集団形成及びコミュニケーション形成を図るよう努めます。

(こどもが学び育つ施設でのこどもの権利保障)

第16条 こどもが学び育つ施設の関係者は、こどもの権利について理解を深め、こどもにとって最もためになることを第一に考え、発達段階や個性に応じてこども自身の力で、学び育つことができるように支援に努めます。

2 こどもが学び育つ施設の管理者や指導者は、その施設等で事故が起こらないように絶えず心がけ、こどもの安心安全のために適切な施設管理や条件整備に努めます。

3 こどもが学び育つ施設の関係者は、こどもたちが相互に尊重し合い、温かく豊かな交流が図れるよう適切な支援及び指導に努めます。他の人の権利を侵すことがないようにこどもの生活を見守り、必要に応じて支援や助言に努めます。

4 こどもが学び育つ施設の関係者は、体罰、言葉による過度の叱責や、虐待、放置等、こどもの権利を侵すような行為を行ってはなりません。

5 こどもが学び育つ施設の関係者は、こどものプライバシーを守り、プライバシーに関する事項は適切に管理しなければなりません。

6 こどもが学び育つ施設の関係者は、こどもの権利保障に問題が生じた場合には、保護者、町及び関係機関と連携し、課題解決に向け取り組み、こどもの権利が保障されるよう努めます。

(町におけるこどもの権利保障)

第17条 町は、こどもの権利保障の視点を大切に、子育て支援施策を実施するとともに、さらなるこども支援に努めます。

2 町は、保護者家族、こどもが学び育つ施設及び地域等が、それぞれの役割を果たすことができるよう、必要な支援に努めます。

(こども自身によるこどもの権利保障)

第18条 こどもは、心身ともに健康に育つためにいろいろな権利があることを知り、自分や他の人の権利を尊重して、自分らしく豊かに成長していくように努めます。

2 こどもは、より豊かに生活できるよう、自分の考えや意見を言うことができます。

3 こどもは、他の人の心や体を傷つけるような権利を侵すことはしません。

第4章 こどもの権利侵害に関する相談と対応

(権利侵害への相談と対応)

第19条 こども、保護者家族及び関係者は、虐待や放置、いじめ等こどもの権利の侵害に際して、こどもの権利の侵害状況と解決策等について町に相談することができます。

2 町は、こどもの権利侵害に関する相談について、関係機関、関係団体と相互に連携し、速やかな対応に努めます。

第5章 こどもにやさしいまちづくりの推進

(こどもの権利の推進)

第20条 町は、こどもの権利が大切にされ、こどもにやさしい町づくりを進めることが、町民にとっても、生活しやすい町であるという考えに基づいて、これからの町づくりを推進していきます。

2 町は、こどもに関する施策が総合的に展開できるよう努めていきます。

3 町は、町が設置及び管理している、こどもが学び育つ施設やこどもが利用する施設の環境整備に努めます。

第6章 雑則

(委任)

第21条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定めます。

この条例は、令和7年7月1日から施行します。

富士川町こどもの権利条例

令和7年6月13日 条例第18号

(令和7年7月1日施行)

体系情報
第8編 生/第1章 社会福祉/第2節 児童・母子福祉
沿革情報
令和7年6月13日 条例第18号