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落語「鰍沢」

落語「鰍沢」

 「鰍沢」は、幕末から明治期に活躍した名人三遊亭円朝がまだ20代の文久年間(1861〜64年)、三題ばなしの会で発表したと伝えられる。その時のお題は「鉄砲」「卵酒」「毒消しの護符」、または「小室山の護符」「卵酒」「熊の膏薬(くまのこうやく)」という。
 以来、歴代の名人がさまざまな工夫を凝らし、口演してきた。登場人物の描写が難しく、落語通の劇作家、榎本滋民さんも「話芸家の博士論文」と評す。。


落語のあらすじ

 身延山参りの旅人が、法論石霊場から鰍沢の船着き場に出ようとして雪道に迷い、山中の一軒家に一宿を請う。そこにいたのは年ごろ28、29歳の美しい女「月の兎お熊」。のどには刃物で突いたような月形の傷。
 「見覚えがあるが」と旅人は首をひねり、「間違ったらおわびをしますが、吉原の熊造丸屋の月の兎おいらんじゃござんせんか」
 「おまはんだれ」
 「おいらんの座敷に上がったことがあるものだが」
 警戒を解いたお熊に「心中をしたと聞きましたが」と水を向ける。
 昔の客と知り、お熊は「心中はしたんですがやりそこなったんです。品川溜めへ下げられて女太夫になるところを危うく逃げて、ここに隠れているんです」
 同情した旅人は、心付けを2両わたす。
 お熊のすすめる卵酒に酔った旅人は隣の部屋へ。酒を都合しに、お熊が外出したところへ亭主の熊の膏薬売りが帰り、残っていた卵酒を飲むと、にわかに苦しみ出す。
 お熊が戻る。
 「なんてことを。身延参りのカモを一羽泊めたんだ。胴巻きがずっしり重そうだからおまえが帰ってきてひと仕事するまで逃げられないように卵酒にしびれ薬を仕込んだんじゃないか」
 これを聞いた旅人は驚く。しびれた体にむち打って逃げ出し、小室山で授かった毒消しの護符を雪で飲み込むと、不思議に効いてくる。部屋に戻り、荷物を取ると一目散。物音に気づいたお熊は、鉄砲を持って追いかける。
 懸命に逃げる旅人が行き着いたのは、そそり立つ絶壁。眼下には、鰍沢の流れ。降り続いた雪で水勢を増したものか、いきり立つような流れ。振り返れば、「亭主のかたき」と鬼の形相のお熊が迫ってくる。
 意を決した旅人はがけ下に見付けたいかだ目掛けて身を躍らせる。
 「ドシーン」
 落ちた弾みで抜けた道中差しが縄を切ったか、いかだはばらばらに。一本の材木にすがって流れ下る旅人の目に、がけの上から、片ひざついたお熊が鉄砲を向ける。
 「南無妙法蓮華経」
 思わずお題目を唱えた直後、「ズドーン」と響く銃声。弾は、旅人のまげをかすめて傍らの岩に「カチン」と跳ねる。
 「ああ、この大難を逃れたのも祖師の御利益、一本のお材木(一片のお題目)で助かった」

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